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「蜜蜂と遠雷」、「アド・アストラ」、オザケンの新譜の発売日がようやく決まった話。

10月7日は会社が休みだったのだけれど、特に予定なんてなくて、昼前に外出してイオンシネマで映画をはしごした。

 

1本目に見たのが「蜂蜜と遠雷」。


映画『蜜蜂と遠雷』予告【10月4日(金)公開】

 

若手ピアニストの登竜門であるピアノコンクールに挑戦する4人の話だ。

4人にはそれぞれ背負うものがある。「元・天才少女」、「完璧」、「生活者」、「天才児」。「元・天才少女」である英伝亜夜(松岡茉優)は、人間くさい葛藤があってよかった。劇中でわかりやすく説明されているわけではないけれど、亜夜は、母親の死をきっかけに表舞台から離れていた。そんな彼女の復活。冒頭、彼女は作り笑顔すらうまく作れない。舞台袖まで歩く道すがら、自分のことを噂する人たちの声が聞こえてくる。一次予選で亜夜が弾く場面は省略されているが、かつての輝きはないようだ。水筒も手袋も小さい頃から使っているもので、幼き日の出来事を引きずっているように思える。マサル森崎ウィン)と再会した時の亜夜の表情のあどけなさは、彼女の天才性を強固にしているのか、どこにでもいる人としての人間らしさなのか。

 

彼女がかつてのように音楽を楽しめるようになったきっかけは二つあって、一つは、明石(松坂桃李)のピアノで、もう一つは塵(鈴鹿央士)の言葉。明石は、28歳とコンクールの年齢制限ギリギリで出場したピアニストで、会社員をやりながらピアノを練習するような人間だ。奥さんもこどももいて、どちらも音楽に詳しいわけではなくて、だからこそ誰にでも伝わるような「生活者の音楽」を志していた。二次予選で「春と修羅」のカデンツァと呼ばれる自由に演奏する部分もとにかく分かりやすさを追求していた。この明石の演奏をきっかけに亜夜はピアノを練習しにコンクール会場を出て、ピアノを練習しに行く。亜夜は、カデンツァ部分の作曲ができず、苦しんでいた。そんな彼女を軽やかに解き放ったのが凡人たる明石の演奏だったのが僕は嬉しい。何が亜夜の心を打ったのかは明言されない。この映画は、言葉でなく映像や音楽で表現し切ってやろうという野心に満ちている。僕が思うのはこういうことだ。明石は自分の生活を、自分の思いをピアノを通して表現した。天才でなくても、ピアノで表現できることはあるのだ。優勝しなきゃ意味がない、という結果主義の価値観なんかじゃなくて、伝えたい何かを表現しきることの楽しさ、みたいなものがきっと亜夜に伝わった。

 

塵が浜辺で遠い沖の方で鳴る雷を見て、「世界が鳴っている」と表現した。そのことが頭の片隅にずっと残っていたであろう亜夜は、コンクール最終予選の演奏直前で幼少期に母親と連弾していた頃の記憶が蘇る。ピアノを弾く前、母親がどんな音が聞こえると亜夜に問いかける。亜夜は耳をすますと、小鳥の鳴き声、雨の音なんかが聞こえてくる。それを母親とピアノで表現していたあの頃。まだ遠くで鳴っている雷(=表現したいもの)を遠くに感じながらも、ピアノを通して、かろうじて繋がることができる。そんな葛藤があったのだろうか。正直、終盤は説明をほぼ省いた演出だったので、頓珍漢な解釈をしているかもしれない。けれど、終盤の亜夜の演奏は迷い、葛藤から吹っ切れて、圧巻だった。

 

蜜蜂と遠雷」を見たすぐ後に、「アド・アストラ」を見た。


ブラッド・ピット主演!映画『アド・アストラ』予告編

 

 

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で、ブラッド・ピットが好きになってしまったから、同時期に公開されている「アド・アストラ」ではどんな演技をするのだろうと興味が湧いていたのだ。あらすじすら知らずに見たのは久しぶりかもしれない。「アド・アストラ」は宇宙飛行士として活躍する父の背中を見て育ったロイ(ブラッド・ピット)は自らも宇宙飛行士になり、地球外知的生命体を追い求めて16年前に行方不明になった父がどうやら生きていて、父の乗る宇宙船がサージを引き起こし、地球に影響を及ぼしているらしい、という感じの始まりだ。SFではあるけれど、ド派手アクションはない。ロイは優秀な宇宙飛行士で感情に大きな起伏はない、いわゆる仕事人間のように描かれる。妻のイブとも離婚してしまっている。地球外知的生命体を追い求める、というのはロマンだ。だけれど、その父を追いかけて海王星へ向かうシーンでロイの寂しさがスクリーンいっぱいに映し出される。ロイの内面はモノローグで語られるから、感情的ではない人物ではないものの、ロイがどう変化していったのかを追うことはできる。他人とうまく付き合えず孤立してしまった父と違う生き方を選択し、妻のイブと再会するというラストはとても好きだ。何日も経ってからじわじわと良さがわかってくるタイプの映画で、正直二本連続の映画鑑賞でうとうとしていだけれど、今見てよかったと感じた。

 

さっき、小沢健二の新譜の発売日が決定した。新譜のタイトルは「so kakkoii 宇宙」で発売日は11月13日。タイトルのダサさすら良いと思ってしまうほどのオザケンファンなので、正常な判断を下せていない。そんな中、今日先行配信がスタートした「彗星」を聴いている。

 

彗星

彗星

 

 2000年代を嘘が覆い イメージの偽装が横行する

みんな一緒に騙される 笑

 

オザケンはポジティブな面ばかり歌わないで、時折物騒な、不穏なことを歌うのだけれど、今回は、「みんな一緒に騙される 笑」と歌う。単なる社会批判ではなくて、アイロニーたっぷり効かせるのだけれど、バカみたいに暮らしへの愛をいまだに歌っていて最高なのだ。

 

今ここにある この暮らしこそが 宇宙だよと

今も僕は思うよ なんて奇跡なんだと

 

今ここにある この暮らしでは すべてが起こる

 

今遠くにいるあのひとを 時に思い出すよ

 

あふれる愛がやってくる

その謎について考えてる

高まる波 近づいてる

感じる