on the road

カルチャーに関する話。

冬物のコートは脱ぎ捨てて

今日みたいな天気の良い日を部屋の窓から見て心が躍る。春めいた天気に心もつられてしまう。

 

日曜の昼間から家を飛び出して散歩なんかしてしまえばいいのに、SHIROBAKOのアニメをついつい見てしまう。めちゃくちゃ滲みるアニメだ。アニメを作る過程を描くアニメは、「映像研には手を出すな!」にも当てはまるんだけど、SHIROBAKOの方が苦しい。

 

この苦しさは納期に間に合わないかもしれないという瀬戸際感と、高校のアニメーション同好会のメンバーが必ずしもアニメ業界で活躍できていなくて、実力不足な場面をまざまざと見せつけられることが原因だろうか。予定通りに行くことは圧倒的に少ないし、武蔵野アニメーションの人たちは当たり前のように夜を更かして、作品を世に広めようと苦心する。そこにあるこだわりに触れるだけでやる気を刺激される。

 

23話目のずかちゃんのアフレコのシーンだけ、YouTubeで先に見ていて、正直そのシーンだけで泣いた。ずかちゃんは、アニメーション同好会のメンバーの中で一番夢への道のりが険しくて、まだ箸にも棒にもかからない状態だ。ずかちゃんは、同好会メンバーでご飯を食べる時は気丈に振る舞う。みんなその気丈さにまた気遣ってしまう。そんな彼女が、アフレコをするんだとしたら、それは泣くしかない。アニメの中のキャラクターのセリフが彼女の境遇と重なる。

 

今わたし、夢に少しだけ近づきました!

 

アフレコが終わった瞬間、みゃーもりが密かに泣くシーンも見事だ。みゃーもりが良かったね、とか安易に声をかけないところが良い。ずかちゃんの今までの努力、報われなさを知っていたら、そんな単純に感想を言えるわけがない。ひたすらに良い演技であったことに涙するしかない。

 

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アニメをぶっ通しで見て、このずかちゃんのアフレコシーンを見て、このシーンの重要性に気づき、より泣いた。ずかちゃんがアフレコしているアニメは「第三少女飛行隊」という名前で、ずかちゃんはラスト近くのシーンで出てくるキャラクターを担当する。「第三少女飛行隊」の主人公アリアは同胞キャサリンの死で戦闘機に乗れなくなってしまっている。アリアにキャサリンの妹ルーシーが出会い、ルーシーの夢を聞いて、アリアは戦闘機に乗る理由を見出す、という場面なのだ。超重要なシーンをずかちゃんが担当するのだ。演技的にも物語的にも納得感のあるラストで超感動する。

 

そんなSHIROBAKOが劇場版をやるなら今すぐ見に行くしかない、と夕方に家を出る。昼間窓から見た春めいた陽気が脳裏に残っていて、コートを着ずに家を出る。肌寒さにすら春を感じてしまう。駅に向かう途中にある紅白の椿の花が咲いている。この時期に咲く椿の花を見るのがささやかな楽しみだ。

 

映画が始まるまで、余裕があったんで、GODIVAでクッキーを買う。既に過ぎてしまったホワイトデーのためだ。会社では、バレンタインとか誕生日プレゼントとか禁止されている。それでも僕の部署では、チョコやプレゼントを贈り合う。たまたまバレンタインデーだったり、誕生日だったりするだけなのだ。僕もクッキーが食べたくなって、たくさん買い過ぎてしまって、たまたまみんなに配りたくなったから、配るだけなのだ。

 

SHIROBAKO劇場版を見る。正直3回は泣いた。みゃーもりが自転車に乗るシーンで風になびく髪の毛に感動した。ミュージカルシーンに泣いた。遠藤さんが再び描くことを決意するシーンに泣いた。何よりラストのシーンに泣いた。けれど、TVアニメみたいにたっぷり人間ドラマを見たかった。2時間では物足りない。それでも十分に活力をもらったわけだ。志を同じにするひとが周りにいない淋しさもあるけれど。

 

劇中であまりにも美味しそうにビールを飲むもんだから、コンビニでビールを買って、酔いながら今ブログを書いている。どんだけ不格好でも表現することは諦めたくないな、と思ってしまう。最近、小説を書き上げられていないけど、なんだか書けそうだ。身体が火照っているのはビールで酔っ払っているからだけではない。そんな気がした。