on the road

カルチャーに関する話。

久しぶりの創作に関するあとがき

大学の後輩に誘われてまあ暇だしと5年ぶりに小説を書いた。書きかけの小説は無数にあるが、書き上げたのは本当に5年ぶりだ。出来は微妙かもしれないが、感謝感謝。さっき合評会をして、自分のモテなさ加減がにじみ出ていることを指摘され、笑ってしまった。まあしゃあない。合評会の場で誰かの小説について発言したり、自分の小説を説明するのも苦手なのを思い出した。気を使わせてしまいそうなので、そもそも今回の合評会の場で自分の小説を説明する気もなかったけれど。数人しか読まないであろうこのブログにあとがきという形でダラダラ自分の小説について書こうと思う。

 

今回、テーマはVHS。VHSを物語の中で描こうとすると、どうしても昔を回想するような形になってしまうので、多少のノスタルジックさが出てしまうのが嫌だった。最終的に出来上がった小説にも多少の名残はあるが、偽書の体裁を取ろうと考えていた。ビデオというメディアで、庶民が初めて時間を巻き戻したり早送りする感覚を味わった、と僕は思っているから、ビデオを起点としたタイムトラベル史のまえがきをでっち上げたかった。だから最近発売された「時間は存在しない」をパラパラ読んだりした。

 

時間は存在しない

時間は存在しない

 

 

ただ文字数の制限があるのと、時間についての知識があまりに乏しく矛盾が生じそうで諦めてしまった。というのとは別に、物語をちゃんと書いてみよう、登場人物の感情を描いてみようという気持ちになっていて(今まではちゃんと書こうとしたことはなかった)、更にはボーイミーツガール的なものを書いてみたくなってしまい、途中からエンタメ感が強くなってしまった。書き終わってから冒頭の文章の温度感と中盤以降の温度感の違いをどう解消しようか、悩ましかったがうまく折り合いをつけられなかった。

 

タイムマシンが結局作中では出てこない。タイムマシンは強すぎるモチーフだから、出さないことに違和感を覚える人は一定数いるのは承知の上で書いている。物語の構造として、回想で過去に行き、いつか村崎に会うであろう未来を描き、最後は現在で出会う予感を描いて終わりにしたつもりで、タイムマシン自体はないが、時間の行き来があるので、薄くつながりをもたせたかった。それと、タイムマシンがもうそろそろできるであろう世界での日常を描きたかった。まだ想像の中でしかタイムマシンを思い描けない世界。別に後悔しているわけではないが、こういう世界になっているからこそ、主人公は小学校の頃に出会った女の子を思い出してしまうし、頭から離れない。けれど、過去に戻って会うよりは、会えなかった日々のことを話したい、と主人公は思うのだろう。タイムマシンができてもタイムトラベルしない男の物語を書きたかったのだろう、と今は思う。

 

固有名詞について。僕は固有名詞を小説に出しがちだ。今回はなるべく抑えめにしたかった。VHSの活かし方を考えたときにビデオカメラで撮ったテープを作中に出しても良かったのだが、テープを観る場面を思い描いた時にあまりに感傷的すぎたので、避けてしまった。(今思うとどっちにしても感傷的な雰囲気は出てしまった)

 

植物について。最近一輪挿しを姉からもらったから、花を部屋に飾っている。部屋に飾り始めてから、花なんか詳しくないけれど、ネットで花のことを調べたりする。主人公もきっとそうで、いつもは花の名前や花言葉なんか気にしないんだけれど、偶然もらった花のことを調べるうちに小学校の頃に出会った女の子と共通点を見出してしまうんだろう。中盤でも伏線が引けなかったので、唐突さが出てしまったのは己の力量不足だ。

 

会話について。昔書いた小説で会話がぎこちない、登場人物に人間味がないと友達に言われたことがある。だから、今っぽい会話にしようと心がけた。坂本裕二の脚本なんかを読み返してセリフにこだわろうとしたが、うまいセリフがひらめかなかった。坂元裕二の『カルテット』で自分が好きなセリフは「私もずるいし別府くんもずるい。でも寒い朝、ベランダでサッポロ一番食べたら美味しかった。それが私と君のクライマックスでいいんじゃない」

 

今回は、3,000字程度で書き上げたが、自分としてはもう少し丁寧に描きたかった場面があるし、物語の続きも書いてみたいので、20,000字くらいでしっかり描きたい。暇人は僕の小説の感想をラインでもなんでも送ってください。(貶しはなしで)

 

明日は休日出勤じゃ。