on the road

カルチャーに関する話。

乗り物酔い/花底蛇/神保町の巡り方が分からない

金曜日、珍しく都内で飲み会の予定があった。中途半端にビルが立ち並ぶ埼玉の街で仕事をしている僕は早く帰るために、最低限の仕事のみこなして、会議資料を早々に作り終えた。よし!と思って帰り支度をしていたら、部長と課長に捕まる。帰りたいオーラを察してもらうために、コートを羽織りながら話を聞く。金曜日は3月とは思えないくらい、暑かった。コートを着ているには少々熱くて、汗ばんでくる。寝不足だったこともあり、コーヒーをガブガブ飲んでいたせいもあって、カフェインがぐるぐる身体を駆け回っているのがわかる。

 

部長と課長の話を1時間弱聞き流して、無事に会社から出る。小走りで会社から駅まで走って行く。朝は雨が降っていたけど、小走りで駅に向かってる時にはもう雨は止んでいた。電車に乗って、座席に座ると、暑さとカフェインで気持ち悪さが込み上げる。先に飲んでいる先輩たちに返事もロクにできず、ぐったりしていた。手にも上手く力が入らない。ネクタイを外して、コートも脱いで少々楽になる。経験則で暑さは乗り物酔いを助長させるものだとわかっているけれど、メカニズムは理解していない。

 

子どもの頃から乗り物酔いをしやすい性分で、バスで本を読む人、ゲームボーイアドバンスポケモンやってる人を羨ましく感じていた。松本人志高須光聖のラジオ番組「放送室」で、松本人志の乗り物酔いのエピソードを聞いて、松本人志も乗り物酔いするんだなとなぜか胸の空く思いを感じていた。「マヂカルラブリーのANN0」で野田クリスタルが重度の乗り物酔いで、電車でも自分で運転する原付でも酔うと聞いて、そのナイーブな一面に強烈に惹きつけられる。重度の乗り物酔いの野田クリスタルがM1の決勝で吊り革のネタをやってるのが面白い。

 

 

都内に着くと、雨が降っていて、折り畳み傘をさす。桜が満開になる時期はこうやって雨が降っているから、なかなかベストなタイミングで花見はできないな、と乗り物酔いであることをあまり考えないようにして歩く。最初こそ気持ち悪い状態であったものの、やんややんや話して楽しい気分になる。終電を逃すものの、二駅分歩いて、なんとか帰る。

 

翌日、飲み会で話にあがった「往生際の意味を知れ」を読み返す。改めて1話のつかみが良すぎる。合コンの自己紹介で元カノと結婚したいとピシャリと言ってのける主人公の狂った愛がそこまで気持ち悪くないように感じてしまうのは、2話目以降に明らかになる元カノのファム•ファタール然とした立ち振る舞いが強烈だったからだろうか。愛が憎しみに、憎しみが愛に反転してしまうような激情を抱えて、主人公が元カノの出産ドキュメンタリー映画を撮る執念はおもろい。

 

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美しさの中に秘められている恐ろしいものを指す言葉は結構多いように思う。最近知った言葉で、花底蛇もそういう言葉だ。花の底に蛇が潜んでいる、直球な故事成語だけど、花の底という表現が好きだ。

 

神保町で古本まつりをやっていると聞いて、飲み会の前の時間を利用して足を運ぶ。今住んでいる家からだと思いの外、簡単にアクセスできることに気付く。雨が降っているから、古本まつりっぽさは全くない。思い返せば、神保町の歩き方がいまいち分かっていなくて、いつもボンディに行ってみようと近くまで行っみてはその行列を見てはがっくり来て、近くの飲食店に吸い込まれていく。古本屋も入ってはすぐ出ての繰り返しをして、結局新品の本を買ってしまう。今日も例に漏れず新品の本を買ってしまう。今日は「差し出し方の教室」を買った。様々な分野の人に自分の伝えたいものをどんな方法で届けようとしているのかを対談形式で掘り下げていくというものだ。伝え方、ではなく、差し出し方という言葉を選択していることが良い。伝えるにはどうしても押し付けるようなイメージが内在していて、それでは本当の意味で読み手が新しい世界に出会えていないことになるように思う。

 

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