on the road

カルチャーに関する話。

2020年良かったものを思い出せる限り

今年は片手で数えられるくらいしか飲み会に参加していないと思う。疎遠な人とはますます疎遠になってしまったし、会社の人としか話さない生活になってしまった。

 


ENJOY MUSIC CLUB 『よろしくね』

 

そういう生活に嫌気が差して、救いを求めるかのようにSNSをのぞく。ゾッとするような排他的な考えを吐き出す人、「電車に乗らないから俺は関係ない」、「インフルエンザの方が死者数が多い」みたいな今まさに苦しんでいる人への想像力に欠けた人なんかが自分とそう遠くない関係性の人の中にいて、より苦しい気持ちになることもあった。大学時代に比べ確実につぶやきが少なくなっている友人たちを思い起こしていると、Enjoy Music Clubの「よろしくね」の歌詞の一節がいつも頭をよぎる。

 

僕らと言えば 相も変わらず

コンビニ行って テレビ見てるよ

新しい曲も作るよ そのうちね

あの娘と言えば SNSも更新しなくて

何やってんだろう?

 

なんてことない日々をさらけ出してくれ、という気持ちになってしまう。いつになるか分からないけれど、コロナが明けたら、色々忘れて遊びましょう。

 

会社の忘年会ではあまり話さないのだけれど、毎年この時期の忘年会は「どんな1年だった?」という話を僕はよくする。皆さんはどうですか。友達と飲み会に行くと、いつも会うと同じような話になってしまうんだけれど、こういう話の振り方をすると思いがけない発見があって面白いのでおすすめです。忘年会でしか会わないような人にもそういう話をしてしまいますね。

 

今年は残念ながら忘年会がなかったので、2020年を1人で振り返ろうと思う。面白かったもの(=良かったもの)を思い出せる限り書く。基本見た順です。

 

◯映画

ジョナサン・レヴィン『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

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2020年一発目に見た映画はラブコメ映画。ゲームオブスローンズやらMCUやら言及されていて、アメリカのカルチャーに詳しければより楽しめるんだろうなという小ネタ満載。そんなに評価が高い映画というわけではないし、下ネタもちょっと多めな映画だけれど、物語の中心に流れる「自分を曲げるな」っていうメッセージが妙に説得力があって、面白えと思った。

 

今泉力哉『mellow』

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今泉力哉監督作品は、これミニシアターで上映してそう、って感じの映画が何故かイオンシネマ系列で上映されることが多いと思う。この映画もイオンシネマで上映されて、地元で見ることができたのを覚えている。『mellow』は片想いしている人たちが想いを伝えまくる映画だ、と言っても良いだろう。この映画の変なところ(面白いところ)は、報われなさそうな恋でもきちんと相手に告白して、振られる。でも、振られた後の優しい会話のやり取りがとても心に刺さってしまう。インタビューの中で今泉監督が言っていたことも印象的だった。

 

僕には、世の中の「これがいい」、「これが成功」みたいなことを、疑いたかったりする意識があるんです。劇中、中学生の女の子同士の恋愛もあったり、不登校の小学生の女の子がいたり、結婚しているけど告白する人がいたりして、世の中的には「よくない」とされていることが出ています。この作品では、そういう人たちをとがめるわけではなく、当たり前に受け入れて生活する。「ダメ」と言われていることを「ダメって言わない」みたいなことは、書いているときに意識していた部分ではありました。

 

www.cinemacafe.net

 

田中圭演じる夏目誠一は花屋の店主なんだけれど、映画の中で一度も花の名前が登場してこないのも良かった。変に花言葉とか使わずに、直感で、自分の好みで選んだ花がそのままその人の気持ちを表現しているんだろうな。Netflixでも見れます。

 

タイカ・ワイティティジョジョ・ラビット』

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今年いちばん愛おしい映画。どこかウェス・アンダーソンっぽさのある画も良い。音楽の使い方も気持ち良い。このブログを書いている今、またレンタルしてしまった。

 

水島 努『劇場版 SHIROBAKO

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全盛期を過ぎた後の逆襲劇とでもいうのでしょうか。積み重ねてきた経験、つながりを活かして劇場版アニメを作る、という劇場版アニメ。逃げてしまったり諦めてしまった人たちが再起するシーンに当時の僕はアツくなった。コロナで仕事が忙しくなって、心に余裕がない時期だっただけに、余計そう感じたのかもしれない。

 

サム・メンデス『1917 命をかけた伝令』

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全編ワンカットっぽく巧妙に編集された映画。映画館で見て良かったと思った映画の一つ。カットがないからか、常に緊張感を持ちながら見ていたのを覚えている。ワンカットっぽいのに、いつの間にか夜になっていたり、朝になっていたりするところが不思議な感覚だったな。冒頭とラストのシーンの対比構造になっていて、それが妙に脳裏に焼き付いている。

 

グレタ・ガーウィグ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

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グレタ・ガーウィグが関わっている作品は今後もチェックしないとなあと思わされた一作。前のブログにも書いたけれど、グレタ・カーウィグのヒロインは自分のやりたいことに突き進める強さを持っていて、それが今作では物語とうまくマッチしていたように思う。

 

キム・ボラ『はちどり』

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個人的今年ベスト3のうちのひとつ。全てのショットが決まってるし、観賞後も余韻に浸っていたいタイプの映画。間違いなく今年を代表する一作です。ちょっとだけ日記に書いていたので、引用しておきます。

 

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城定秀夫『アルプススタンドのはしの方』

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高校演劇が原作で上映時間が75分の低予算映画。アルプススタンドの端だけで物語は進み、グラウンドは一切映らない。TBSラジオの「アフター6ジャンクション」通称アトロクで、高校演劇特集をやってからというもの僕は高校演劇が気になって仕方がなかった。これはもう見に行くしかないと、池袋まで足を運んで午前中の回を見に行った。「しょうがない」で蓋をしていた想いが解き放たれる様に感動してしまった。高校生が実際にこの作品を演劇で演じるところも見たい。

 

ふくだももこ『君が世界のはじまり』

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見た後に家で思い返したりしているうちにだんだん評価が高くなってしまった映画ってありませんか。僕はこの映画がそれに当てはまる。演出は荒いと思うし、思春期の鬱屈とした人たちの独りよがりな感じがあまり好きではなかったんだけれど、松本穂香の演技のおかげでなんとか見ていられた。ラストシーンの画の強さが最高なので、それだけで見る価値がある。演出が洗練されてきたらと思うと、今後が楽しみ。ちなみに音楽があらかじめ決められた恋人たち。

 

三木孝浩『思い、思われ、ふり、ふられ

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個人的今年ベスト3のひとつ。舐めてかかったら、とんでもなく傑作だった作品。もちろん前評判が良かったので、見に行ったんだけれど。少女漫画原作の恋愛映画は小っ恥ずかしい演出が多いんだけれど、安易な演出はほとんどなくて、あんまり映画を見ていない人にも安心して勧められるタイプの映画。簡単に言えば、この映画は他の誰かが傷つかないように自分を蔑ろにしてしまう人たちが自分の気持ちと向き合って成長していく物語。

 

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石立太一『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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個人的今年ベスト3のひとつ。何度見ても泣いてしまう。予告を見ても泣いてしまう。京アニの『聲の形』や今作の共通点として、自分の加害性と向き合う、というところがあると思う。人と繋がっていくことで過去の自分がどんなに酷いことをしてきたのかに気づいてしまう。TVアニメシリーズのホッジンズ大佐の「してきたことは消せない、でも、君が自動手記人形としてしてきたこともまた消えないんだよ」というセリフが僕は大好きなんだけれど、過去を受け入れ、前に進む物語ってたまんないですね。

 

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クリストファー・ノーラン『TENET』

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個人的今年ベスト3には入らないが、理屈抜きでテンションの上がった映画であることは間違いない。物語が難解だ、という人が多いが、とにかく考えるな、この映像体験をひたすら喰らえ!って感じの映画。

 

13作品目 MTJJ『羅小黒戦記 僕が選ぶ未来』

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バトルシーンがものすごいかっこいい。それだけでもう十分なのに物語もわかりやすい勧善懲悪じゃないところが良い。

 

◯漫画

高松美咲『スキップとローファー』

 主人公のみつみちゃんの真っ直ぐさももちろん良いけれど、周りのキャラクターも人間味があってこの世界丸ごと好き。好きなシーンは志摩くんが元気ないからって言って、お土産の煎餅3枚あげるところ。

 

ヒロユキ『カノジョも彼女』

 二股するところから始まるハイテンションなラブコメ。今年いちばん面白かったラブコメのひとつかもしれない。みんな頭のネジが外れている。僕も頭を使わずに毎週読んでた。

 

横槍メンゴ×赤坂アカ『推しの子』

最初転生ものかあ、と思ったけれど、母親を殺した犯人を探すために芸能界入りするという物語展開に痺れた。 恋愛リアリティショーの話も結構突っ込んで書いてくれて、スカッとした。

 

和山やま『女の園の星』

女子校の先生が主人公の漫画。全ての話が絶妙なリアルさで面白い。好きな話は3話目。生徒が描いている漫画を読んで、ちょっとダメ出しをした後に、生徒からその続きの展開を教えてもらうんだけれど、その超絶展開に先生が悪くないな、って反応しているところが好き。 

 

勝木光ベイビーステップ

 

今年の漫画ではないけれど、今年初めて読んだので。主人公のエーちゃんの頭を使いまくって悪あがきして闘う姿がかっこいい。あまりにも頭を使って闘うので、中盤以降、ひと試合ひと試合かなり長いんだけれど、一気読みできたからあまり苦ではなかった。全巻買っちゃったので、数年後にまた読み返します。

 

藤本タツキチェンソーマン』

 

今年の少年漫画でぶっちぎりで面白かった。アンチ少年漫画感が最高。主人公の夢は普通の生活をすることだったり、女性の胸を揉むことだったり、他の少年漫画ほど闘う理由がないけれど、闘っているところとか。絵がものすごい上手いわけではないけれど、コマがすごい見やすいし、映画大好きなんだなっていうショットが多い。第二部も楽しみにしてます。 

 

近藤聡乃『A子さんの恋人』

A子さんの恋人 1巻 (HARTA COMIX)

A子さんの恋人 1巻 (HARTA COMIX)

 

 

個人的今年ベスト。切っても切れないグズグズな関係の終わりまで描き切った最高の漫画。何回でも読み返したい。近藤聡乃の線も魅力だけれど、ドラマ化しても物語の強度は落ちないと思うので、ぜひドラマ化してくれえ。

 

オジロマコト『君は放課後インソムニア

 個人的今年ベスト3のうちのひとつ。インソムニアっていうのは不眠症のこと。主人公の中見とヒロインの曲、2人の不眠症の高校生のお話。毎話ふたりが愛おしくなる。徐々に仲良くなっていくんだけれど、恋愛的な意味だけじゃなく、支え合ってるのが最高。

 

山口つばさ『ブルーピリオド』

 

今年読んだんだか、あまり覚えていないけれど、最近読んだので。森先輩の「あなたが青く見えるならりんごもうさぎの体も青くていいんだよ」とかアユちゃんの「俺の"好き"だけが俺を守ってくれるんじゃないのかなあ…!」のセリフがすっげえ響いた。なんでも器用にこなせる主人公の八虎が自分を表現するのが苦手なところが好き。そういう奴が周りと比べられながら、やりたいことにひたすら向き合うのが超アツくて元気もらえる。大学編がこれからどうなるのか楽しみ。yoasobiの「群青」がこの漫画とコラボしてできた曲と最近まで知らずに聴いていたんだけれど、良い曲だよなあ。

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クリープハイプの「栞」とコラボしたMVも良いです。


クリープハイプ「栞」×「ブルーピリオド」【MMV】

 

一色まことピアノの森

 

最近一気読みしました。雨宮が一方的に主人公の海のことをライバル視しているけれど、海は雨宮を尊敬できる友達と捉えていて、その歪さは物語の後半まで引きずる。2人の和解のシーンは泣いてしまった。この漫画の名脇役は佐賀先生ですね。良いピアノだけを求めて、マリア(女装した海)のいるショーパブに入り浸ったり、ポーランドショパンコンクールまでピアノを聞きに来たり、熱狂的なピアノ狂すぎる。こういう行動力のあるファンになりたい。

 

◯小説

劉慈欣『三体II 暗黒森林』

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 

 

まともに読んだ小説はこれだけかもしれない。来年はもっと読みます。一部に比べて読みやすいが、物語的厚みは十分。

 

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◯音楽

Laura Day Romance「rendez-vouz」

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今年いちばん聴いた曲になりました。ちょっと憂鬱な気分の時とか夜散歩している時によく聞いていた。VHSビデオみたいな質感のMVも僕好み。今年1st Albumを出したばかりなので、まだ知名度はそこまでないのかもしれないが、確実に売れると思う。この曲に限らず歌詞が好きなんですよ。

 

chelmico「Easy Breezy」

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今年、アニメをたくさん見るきっかけになったのは「映像研には手を出すな!」で、この曲hそのOPに使われていた。想像力が爆発した時の無双感がこの曲にも感じられて、テンション上げたい時に聞いていた。

 

Crrepy Nuts「かつて天才だった俺たちへ」

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Crrepy NutsがTVに出始めて売れ始めたな、と感じた時にリリースされて、こレは絶対売れるわ、って思った一曲。全てのナード、日陰で燻っている奴らがやってやんぜ!って気持ちになる。帝京平成大学のCMっていうのもいい。これがもし早慶とかMARCHだと冷める。「かつて天才だった」っていうのはもっと広い意味で使われていると思うから変に偏差値高い大学のCMに使われなくて良かった。冒頭の歌詞がキマってる。Creepy Nutsも自分たちのラジオで醜態を晒しているからこそこういうの歌えんだなって思う。

 

苦手だとか 怖いとか 気づかなければ

俺だってボールと友達になれた

頭が悪いとか 思わなけりゃ

きっとフェルマーの定理すら解けた

 

yoasobi「夜に駆ける」

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紅白出場おめでとうございます。CDをリリースせずに紅白に出場した歌手がyoasobiが初めてだとか。とにかく音が気持ち良いからついつい聞いてしまう。2分13秒くらいからのメロディが特に好き。

 

RYUTist「ナイスポーズ」

ナイスポーズ

ナイスポーズ

  • provided courtesy of iTunes

 

PVが出てないのが勿体無いくらいの名曲。この曲の展開が素晴らしすぎて、ため息が出てしまう。作詞・作曲したのは柴田聡子なのだから、こうなるのもうなずける。大サビは鳥肌。

 

小山田壮平「OH MY GOD」

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小山田壮平は好きなアーティストの1人だ。僕がアーティストを好きになる条件に明るさも暗さも兼ね備えている。というのがあるのだけれど、この曲はまさにそういう部分を歌っているように思う。これからも歌い続けてほしい。

 

OH MY GOD あの頃の僕らは心から歌っていた

闇と虹の向こう側にはきっと 何かが待っている

言葉にできるなら 伝えたいのだけど

陽炎のように揺らめいて消える

 

砂埃の街に 新世界が響く 

ひとつひとつの痛みをのみこんで

ふいに時は止まり 新世界が響く

色とりどりの優しさを包んで

 

星野源「折り合い」

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バナナマンの日村さんの誕生日に作った曲。星野源は1st Albumから一貫して世界はまったくひとつになれない、重なり合っているだけだって歌っている。そういう一貫性ってすごいなあと思う。

 

愛しているよ君を

探しているよいつも

他人のようで違う

2人の折り合いを

 

星野源といえば、「うちで踊ろう」も良い曲でしたね。あのタイミングで救いになる曲をドロップしてくれてありがとうという気持ちです、ほんと。

 

インナージャーニー「エンドロール」

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andymoriが大好きな人たちが作った曲。ちょっとハスキーなところも良いし、センチメンタルな歌詞も大好きです。小山田壮平がインナージャーニー好きってつぶやいているとこも個人的にアツい出来事でした。

 

今年はあまり色々な音楽を聞かなかったので、来年はもう少し聞こうと思う。特に洋楽を…。

 

 

★★★

お笑いとか、ラジオとか、サウナとか振り返るには時間が足りないので、省略!

来年はもっとドラマも見たいな!

みなさん良いお年を!

来年もよろしくお願いします!